あなたの知らない自律神経の世界

あなたの知らない自律神経の世界

人は自律神経のバランスが乱れている時、空気が読めない発言や相手を傷つけるような言い方など、後で後悔するような“いわゆるダメな行動”をしてしまう。

伝え方を心理テクニックのような切り口で書いたビジネススキル本が昨今売れていたが、TPOに合わせた適切な発言や立ち振る舞いは、「技術ではなく、実は医学として考えられる」ことはあまり知られてない。

自律神経が乱れると血流が悪化して全身の細胞に酸素と栄養が行き渡らなくなってしまう。すると、集中力や判断力が低下し、適切な対応ができなくなってしまうのである。

つい失敗してしまう人は伝え方や言い方うんぬんより、まずは自律神経のバランスが乱れている可能性を疑った方がいいかもしれない。

自律神経はとても優秀なあなただけのマネージャー

自律神経の働きを正しく理解している人は意外と少ない。ほんの一部だが、具体的に以下のような働きがある。

・睡眠時の呼吸をコントロールする
・暑い時に発汗して、体温を下げる
・寒い時に鳥肌を立て、体を震わせて体温を上げる
・まぶしい時に目を閉じる
・熱いものに触れた時にとっさに手を離す

普段、我々人が意識していない体の機能、活動のほとんどは自律神経が勝手にコントロールしてくれている。

最も重要なのが、37兆個にもなる一つ一つの細胞へ栄養と酸素を送り届ける血液の巡りを自律神経が支配していること。人の血管を一本にすると地球2周半分にもおよぶ長さがあり、自律神経はその血管すべてに沿って血流を管理している。

膨大な守備範囲を黙々と。文句も言わず、365日24時間稼働で仕事をするめちゃくちゃ優秀なマネージャーのような存在なのだ。

しかし、ひとたびこの自律神経がご乱心だと血流が悪くなってしまう。

すると様々な役割を果たしている臓器たちに十分に酸素や栄養が行き渡らなくなってしまう。こうなると、体調に何かしらの悪影響であったり、諸症状がでることは想像に容易い。

鼓舞と回復の役割を持つ自律神経

自律神経は交感神経と副交感神経の2つに分かれており、それぞれ別の役割を担っている。

交感神経は心拍数を上げたり、血管を収縮させて血圧を上げる働きがあり、副交感神経は心拍数を下げたり、血管を拡張して血圧を下げる働きがある。交感神経優位の時は興奮、緊張、覚醒状態、副交感神経が優位の時はリラックス状態である。

自律神経が整っている状態とは、この二つが高いレベルで機能してバランスがとれている状態を指す。

興奮とリラックスの両方だなんて相反するんじゃない?と思うかもしれないが、交感神経と副交感神経が高いレベルでバランスが取れていると、血管の収縮と拡張が交互に起きて血管がリズミカルに脈打ち、血液の流れがとてもスムーズになる。

いうなれば、リラックスしている興奮状態。さながらモハメド・アリの「蝶のように舞い、ハチのように刺す」というイメージだろうか。

しかしながら、男性は30歳、女性は40歳を境に副交感神経の働きがガクッと落ちてしまうことが分かっている。年を重ねると若い時にはすんなりできていたはずのリカバリーができず、交感神経優位で自律神経のバランスをどんどん崩して悪循環に陥りやすい。

これは、加齢による身体の衰えで間違いないが、厳密には回復力の低下という方が正しい。



先日、夏休み中の小学生の甥っ子姪っ子の遊びに付き合ったが、翌日の子供たちの元気ハツラツさ加減から、これが回復力の格の違いなんだ、と悟った。

また、自律神経は心とも密接な関係があることも医学的に立証されている。

例えば、ネガティブな感情からひとたびマイナスの言葉を発した瞬間、自律神経のバランスが乱れ、血流が悪くなり、内臓機能が低下し、ホルモンのバランスが崩れる。まさに負の連鎖が巻き起こる。一方、ポジティブな感情では自律神経が整うのだ。

これらは自律神経を測定、解析する機械の開発によって分かった。感情もまた自律神経を大きく左右している。

自律神経のためにできる簡単なこと

年中無休でこんなに頑張ってくれている自律神経を労いたい。ひいては自分自身を労いたい。そう思う人も多いはずなので、最後に自律神経のバランスを整えるためにできる簡単な3つのことを紹介したい。

・ゆっくり喋る
呼吸が浅くなると血流が悪くなる。反対に呼吸が深くなると血流は良くなる。浅く早い呼吸は交感神経を刺激するので、瞬間最大風速的にやる気を上げる効果はあるものの、一時的なもの。長く続くと血管が収縮し、血流が悪くなり、パフォーマンスが著しく下がってしまう。

・背筋を伸ばす
背中が丸まった猫背や首が前に出た姿勢だと胸郭が狭まり、呼吸がしにくくなる。また、背骨のゆがみが物理的に自律神経を圧迫するので、各臓器の働きを妨げてしまう。例えば、胃や腸といった消化器系の不調(便秘や胃もたれ)、気分の浮き沈みが激しくなったり、慢性的な疲労が抜けない、倦怠感を感じるなど。

・ため息をつく
幸せが逃げるというため息は医学的観点ではまったくの逆。息を長く吐けば吐くほど副交感神経の働きを高めることが分かっていて、深呼吸で心が落ち着くのと同じ効果がある。人は思いつめた時に呼吸が浅くなり、息苦しさを感じる。そのため、体が酸素を欲しがって深く呼吸をしようとする。ため息は無意識に人が行う本能的な心身のリカバリー。

加齢とともに衰えていく副交感神経の機能、すなわち回復力をどれだけ意識するかがカギになる。

少し怒りっぽくなったり、誰かに心無い一言を浴びせしまったり。心拍数や血流の流れを意識的にコントロールすることはできないように、自律神経が乱れていると感情のコントロールが難しくなってしまう。

悪いのはだいたい自律神経のせいだ。

そんなときはゆっくりと息を吐き、背筋を伸ばして、あなただけの優秀なマネージャーを労ってあげてほしい。

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