地震大国である日本は予期せぬ事象によって、これまで幾度となく電力供給が危ぶまれる事態と直面してきた。しかしながら、その地震の原因ともなる地中深くの海洋プレートが潤沢な地熱エネルギーを発生させていることも忘れてはいけない。
昨今のSDGsの文脈やエネルギー自給率問題で度々注目されてきた地熱発電について、知らないことが多かったので調べてみました。
地震大国日本は世界第3位の地熱資源大国
日本は世界第3位の地熱資源を持つ国である。
下記の「地熱資源量および地熱発電設備容量」の表を見てみると、日本の地熱資源量はアメリカ、インドネシアに次いで多く、トップ3の資源量は4位以下を3倍近く引き離している。
しかしながら、地熱発電設備容量(=ある一定期間に100%の出力で発電できる電力量)では、日本は53万Kwと各国よりも軒並み低い数値となっている。
地熱資源はたくさんあるのにも関わらず、うまく活用できていない現状があるのだ。
国名 | 地熱資源量 (万Kw) | 地熱発電設備容量 (万Kw) |
アメリカ合衆国 | 3,000 | 345 |
インドネシア | 2,779 | 134 |
日本 | 2,347 | 53 (2016年度時点) |
ケニア | 700 | 59 |
フィリピン | 600 | 187 |
メキシコ | 600 | 102 |
アイスランド | 580 | 67 |
エチオピア | 500 | 1 |
ニュージーランド | 365 | 101 |
イタリア | 327 | 92 |
ペルー | 300 | 0 |
引用:資源エネルギー庁資源・燃料部「地熱資源開発の現状について」
次に日本国内の電源別の発電力量の内訳を見てみよう。天然ガスが37%と最も多く、次いで石炭の32%となり、原子力、水力、石油、再生可能エネルギーはそれぞれ10%以下である。
再生可能エネルギーには「バイオマス、風力、太陽光」などいくつかの発電方法が合算されているが、そのほとんどを太陽光発電が占めており、地熱発電は全体の電力量に対してたったの0.2%ほどしかない。
また、天然ガスや石油、石炭などの化石燃料は海外からの輸入に頼っており、日本での生活は海外の資源によって何とか成り立っているという状況なのだ。
出典:日本原子力文化財団/原子力・エネルギー図面集
そもそも地熱発電って何?
地熱発電とは、150度を超える高温・高圧の蒸気・熱水が貯まる地下深部(約2,000m)の地熱貯留層から蒸気と熱水を採取して、タービンを回して電力を発電させる手法のことをいう。
蒸気と熱水とに分離させて、蒸気をタービンに送る方式を「シングルフラッシュ」といって、日本で最も多く使われているのがこれである。一方、中小規模にはなるが、100度程度の温度帯でもフロンガスやアンモニアなど、帰化しやすい触媒を地熱によって沸騰させてその蒸気でタービンを回す「バイナリー方式」という方法もある。
日本における地熱発電の歴史は意外と古く、1966年(昭和41年)に遡る。
岩手県の松川地熱発電所が蒸気型地熱発電所として最初の運転を開始しているのだが、驚くことに50年以上経つ現在も現役で稼働している。
また、これも知らない人が多いのではないだろうかと思うが、地熱発電用のタービンは日本メーカー3社が世界の7割のシェアを占めている。日本の高い技術力が世界の地熱発電を支えているといっても過言ではないのだ。
その実、歴史も実績もあって、世界で実力が認められている日本でナゼ地熱発電が広がっていかないのだろうか。
地熱発電のメリット・デメリット
改めて、地熱発電のメリット・デメリットをまとめていく。
■メリット
・CO2がほとんど排出されない
・他の電源に比べて設備利用率が高い(=風力や太陽光と違って天気や気候に左右されない)
・発電後の熱水を他事業に活用できる(例…ハウス栽培や養殖事業)
■デメリット
・土地調査→開発→電力供給まで14年程度かかる
・掘削成功率が低く、開発コストが高い(1回あたりの掘削コストが数千万円~数億円)
事業リスクとして、苦労して電力供給まで漕ぎつけたとしても、地下深くにある地熱資源のため、高精度の調査が難しく、安定的かつ継続して地熱が利用し続けられるどうかは未知なのだ。
また、国・自治体・近隣住民との利害調整に多大な時間を要することも地熱発電が中々広がらない要因になっている。現状、14年程度の開発プロセスを10年未満に短縮する取り組みであったり、技術開発や地熱資源の調査に対する補助金など国庫からの支援ももちろんある。
しかしながら、それをもってしても事業者側に過大なストレスやリスクがあるところが大きな足枷になっているのだ。
さいごに
今回の地熱を調べるに至ったきっかけが、業務スーパー創業者である沼田昭二氏が異業種から地熱発電の開発にチャレンジしているというニュースだった。
昨今のロシアウクライナ問題でリスクがより顕在化した食糧とエネルギーの自給率問題。
「誰かがそのリスクを負っても数十年、数百年後のことを考えて地熱資源の開発をしていかなくてはいけない」と語っている。
海外の資源に頼る日本は今後どのような未来を描くのだろうか。今後の地熱発電に注目していきたい。