ゲーム理論で考える鬼滅の刃キャンペーンの転売問題

ゲーム理論で考える鬼滅の刃キャンペーンの転売問題

つい先日、鬼滅の刃とローソンのコラボキャンペーンでクリアファイルの転売問題がテレビやSNSで話題に多く上がっていました。鬼滅の刃面白いですよね。

昨年アニメ化されたのがきっかけで第1話に心を鷲掴みにされ、すぐに漫画喫茶へ足を運んで、最新刊まで一気読みしました。その後、爆発的なヒットで昨年度の発行部数は同誌の「ONE PIECE」に次ぐ第2位とのこと。

その人気の裏付けか、今回のキャンペーンは数量が限定だったこともあり、すぐに品切れする店舗が続出して、間もなくフリーマーケットアプリへの高額な転売が相次いで騒がれました。

※以下、j-castニュース記事を一部引用します。

7日7時提供開始、売り切れ続出

このクリアファイル企画は朝7時開始と告知されていたが、始まるや否や売り切れる店舗が続出。ツイッター上ではファンから「当日2分で完売だって」「3店舗まわったけど鬼滅ファイル無かった…」などの報告があったほか、告知に反して7時前から提供していた店舗もあるのではないかとの指摘もあがり、混乱状態に陥っていた。当時、「鬼滅ファイル」はツイッターで盛り上がっているワードを表す「トレンド」にも入った。

https://www.j-cast.com/2020/01/11376947.html

私自身は、転売経験もありませんし、専門家でも法律家でもありませんが、本作品を慕っている1社会人として、今回の一連の転売問題をゲーム理論(俯瞰した目線)を軸に書いていきたいと思います。一個人の意見として、ご容赦いただければ幸いです。

そもそも転売自体は生活になくてはならない行為

転売行為はいけないことでしょうか。

当然ながら、盗んだものだったり、他人を貶めたり傷つけたり、法律やルールを犯す行為で為された取引は論外ですが、自分で手に入れたものをより高い価値で他人に受け渡すというのは、世の中に当たり前にある活動であり、我々の生活になくてはならない行為と言えます。

転売はマイナスよりプラスの作用の方が大きい

今回のキャンペーンで得をして、損をしたのは一体誰でしょうか。分かりやすく見ていくために登場人物を「提供元企業、転売目的の購入者、一般消費者、個人間取引プラットフォーム」の4者として、各プレイヤーの「良い」「悪い」状態を整理していきます。

<供給元企業>

良い…商品が売れる、話題になって新規顧客にリーチする、より多くの人に認知される

悪い…商品が売れない、話題にならない

<転売目的の購入者>

良い…商品が仕入れ額より高く売れる

悪い…商品が売れない、商品の売価が損益分岐を下回る

<一般消費者>

良い…商品を手に入れる

悪い…商品が手に入らない

<個人間取引プラットフォーム>

良い…商品の取引数が増える

悪い…商品の取引数が減る

こう見てみるとどうでしょうか。一概に損得勘定だけで推し測ることはできませんが、転売目的の購入者が購買に参入したことで、SNSを中心に大きく話題になり、企業や作品の露出が増えて、「0円」で受け渡しされていたモノが経済活動を作り出しています。

転売は悪ではない=誰も損失を被っていない

転売問題のタチが悪いところ(何度も話題に上がる)のは、「致命的な損失を誰も被っていないから」だと考えています。

行き過ぎた買占め行為などで本来、手に入れられたかもしれないモノが手に入れられなかったという心情の損失は理解できますが、一概に「転売行為や、転売ヤーが悪い」「対策をしないのが悪い」と騒ぎ立てるのは、少し違うように思います。

冷静に結果だけを見ると「モノが手に入らなかった」というだけであり、飲食店で食べたいと思ったメニューが品切れで注文できなかったのと同じことと言えます。

そこに傾けている気持ちの大小、その時の熱量で心の揺れ動きはあるかもしれませんが、だからとって一時の感情に支配されて、誰かに攻撃的な批判や中傷をしていい事由にはなり得ません。

また、転売問題の本質として、「他人(誰か)が得することによって、相対的に自分が損をしている」と感じてしまう「お金儲け」を毛嫌いしがちな日本人の気質が、SNSで表面化しているような気がするのです。

供給元に大きくプラスに働く場合にだけ転売がなくなる

それでは、どうすれば、転売がなくなるでしょうか。

安く仕入れて、高く売るという市場原理はいつも働くはずですので、法律や規約など、取引上禁止されていない転売行為は基本的になくならないはずです。

その一方で、「転売行為をさせないようにする」ことは、提供元による仕組みで実現することができます。ただし、それには大変な労力やコストが掛かるため、提供元に大きくプラスに働く算段がある場合にしか実行されません。

長くなるので、詳細は下記のライブドアニュース記事を参照いただきたいですが、宇多田ヒカルさんのコンサートチケットのガチガチの転売対策が良い例です。

宇多田ヒカルのライブは運営も神! 鉄壁の転売対策&グッズ事前予約に絶賛の声

https://news.livedoor.com/article/detail/15561268/

昨年2019年6月14日「チケット不正転売禁止法」が施行される前の2018年に、ここまで本気の転売対策を講じています。これには、2つの理由があると言えます。

1つ目は、「12年ぶりのあの宇多田ヒカル」のチケットが転売によって高値で取引されて、ニュース等で取り扱われることがブランド価値を毀損するマイナスが大きい。

2つ目は、全力の転売対策を行うことでブランド価値がより高まる。

逆に言うと、対策をしないことで大きくマイナスの影響が出る場合か、よっぽど大きなメリットがない限りは、転売対策はしないということになります。

さいごに

今回の事の顛末としては、クリアファイルを数量限定の景品とするのではなく、予約販売として欲しい人すべてに行き渡らせるようにすることになりました(※裏面デザインを一部変更したものとなる予定)。

これは、想定以上に早かった品切れと高額転売が騒がれたことをマイナスと捉えた結果の対策であると考えられますが、この対応によってゲームの盤面がまた一つ進行しました。

数量や限定としていたキャンペーンの存在意義はあったのでしょうか。それによる狙いや思惑は?仮にもしデザインを変更した場合に、既存商品の希少価値を更に押し上げることになるのではないか。など、一つのシュチュエーションを元にゲーム理論的な思考で俯瞰してみると様々な一面が見えてきます。

はたしてこれから得をして、損をするプレイヤーは誰でしょうか。皆さんはどう考えるでしょうか。

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