NAVERまとめサービス終了とまとめの本当の価値とは

NAVERまとめサービス終了とまとめの本当の価値とは

今年9月末をもって、NAVERまとめサービスを終了することが運営元企業から発表されました。

NAVERまとめ サービス終了のお知らせ
サービス環境・市場環境の変化による単独サービスとしての今後の成長性や、LINEグループ全体での選択と集中の観点などをふまえて検討した結果、今回の決断に至りました。​​NAVERまとめはロボット型検索では得られにくい、人々の知見や観点を活かした検索結果の提供を目指して2009年よりサービスを開始いたしました。​

今回、NAVERまとめはサービス終了となりますが、簡潔に情報を集約して伝える「まとめ」そのものの価値は、日々増え続ける情報環境においてますます重要になってくると考えております。

​2019年、LINEは検索事業への参入を発表いたしました。NAVERまとめが培ってきたノウハウは、この新しい検索事業の発展に活かしてまいります。
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公式サイトプレスリリース:http://navermatome-official.blog.jp/archives/83259956.html

インターネット時代のまとめ情報インフラとして隆盛を極めたキュレーションサービス終了の理由とまとめの本当の価値について書いていきます。

サービス終了の背景と理由について

まず、初めにサービスが終了する理由について。よくよく語られていれるのは、著作権侵害の問題とサイトアクセス数の減少で、これについてはほぼほぼその通りだと考えています。

一時世間でも大きな話題になりましたが、2017年2月にGoogleによって検索アルゴリズムの変更がなされました。これは、DeNA社が提供していた医療情報をまとめた「WELQ」というサイトで、正確性を欠いている、著作権上問題がある記事を多数掲載していたという炎上騒動に端を発したもの。

これにより、品質やオリジナリティなどが低いと判定されたサイトは検索結果の表示順位が下がるようになり、主なサイト流入が検索エンジンからであったNAVERまとめも多大な影響を受けたことは想像に難しくありません。

以下、公式プレスリリースと同社サイトで公表されているサイトアクセス数です。

2014年6月時点:6,700万UU

公式サイトプレスリリース:[NAVERまとめ] サービス開始5周年の実績値を公開より抜粋 https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2014/780

2019年8月時点:4,800万UB

公式サイトより抜粋:https://www.linebiz.com/jp/service/media-service/naver-matome/

※余談ですが、マーケティングリサーチ会社による2014年の国内サイト訪問者数ランキング(※あくまで推計)では、「NAVERまとめ」は10位でした。上位には、Yahooやアマゾン、楽天、Googleなどが名を連ねています。

2009年のサービスリリースから2014年までの5年間の中で、後半のアクセス数の増加は鈍化していますが、2017年に検索アルゴリズムが変更されるまでアクセス数を伸ばしていたと仮定すると直近の4,800万という数字は決して少なくない数字ですが、それでも全盛に比べて現在3~4割程度減少していることが読み取れます。

これに加えて、昨今でより世間の目が厳しくなった著作権に関するチェックや誹謗中傷炎上に対する人的工数が以前に比べて上乗せされていることを考えると、品質や信頼性を担保するために必要なそれらの運営管理コストに見合う広告収入のリターンが得られない、もしくは今後確実に見合わないであろう見通しだった、と考えるのが自然ではないでしょうか。

情報に対する人の価値観の変容

アクセス数減少の理由は別のところにも。検索アルゴリズムの変更で直接的な影響に加えて、昨今では受け手の情報価値の感じ方が変わっているということがあると考えています。

それは、情報そのものよりも「誰が発信している情報なのか」が重要な価値として認識される時代になっている、ということ。

確かにモノや情報が世の中にたくさん出回って、大抵のものは簡単に手に入れられる便利な世の中になりましたが、一部弊害として、どれが自分が探している情報なのか分かりづらい、選択しづらいという不満がここ数年で個々人に蓄積していたように思います。

PCのブラウザで調べ物をしていて、Google検索でまとめサイトをクリックしてしまったら、反射的にブラウザバックしている方は想像以上に多いと思います。

自分が求めていた情報とクリティカルに合致している検索結果をクリックして、それが内容の薄いものだった時の読み終わった後のあの負の感情は筆舌に尽くしがたいものがあります。

キュレーションサイトの性質上、良くも悪くもユーザーとのタッチポイントは独立した記事そのもので、ユーザーが分かるのは、NAVERまとめに投稿された誰かの記事ということだけ。フェイクニュースや嘘偽りなど、デマ情報が横行するようになった現在、信頼性を問うために提供者が明らかになった情報を多くの人が優先して求めていくのは当然の流れだと言えます。

クオリティを上げるために記事の評価制度を見直したりと、様々な工夫を凝らしてきたことは周知の事実ですすが、行きつくところ人に見られてナンボというPV数が目的の根幹にあると、有益な情報で「誰か」に喜んで欲しいと本気で考える人は圧倒的に少数になります。

それに加えて、この20数年に紆余曲折を経てたくさん情報に触れたことで、誰にどう伝えたいか、そもそも伝えたい相手がいない、当事者不在の「結果と中身を切り貼りした単なるまとめ情報」を取捨選択する目が肥えてきたということもあるのではないでしょうか。

まとめの価値は「誰が」×「誰のため」×「情報」で決まる

最後にまとめ情報の価値についてです。簡潔に情報を集約して伝える「まとめ」そのものの価値が高まっていくことは全面的に同意です。では一方で、その価値というのはどのように算出されるのでしょうか。

それは、「誰が」「誰のため」「情報」この3つの要素で決まります。受け手の体験価値、つまり「まとめそのものの価値」はこれらを掛け算で0にも100にもすることができるのです。

上述したとおり、現在そして未来は「誰が」というところが重要な要素として見られるようになっていて、情報単体の価値が高く評価されていた過去は十分でしたが、NAVERまとめはここがウィークポイントだったと言えます。

キュレーター側がこの「誰が」の部分をサイトのブランドで補完している成功例としては「NewsPicks」でしょうか。「意思決定者、情報感度が高い、年収の高いビジネスパーソン」といった明確なターゲット設定によって、その場の体験価値や提供される情報の価値をより高めています。

さいごに

NEVERまとめで得られた有益な情報だったり、気付きは1度や2度ではありませんし、何より、学生時代に通学の電車内やバイトの休憩時間など多くの隙間時間をともに過ごしました。

誤解しないでいただきたいのは、人の役に立つ有益な情報を、必要としている人により多く届けるたいという目的の元、目を引くためにタイトルや画像などを引きのあるタイトルやキャッチにするのは戦略的に必要なことだと考えていますし、そして、読んだ人の気持ちや感情に少しでも動きを与えたり、行動を何か変えれたら、それがたった1人であったとしても存在価値はあると考えています。

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