昔からワンコインで買えるサボテンなどの植物を自宅で育てている。
葉が生い茂るような植物もあったが、余計な世話のしすぎ、水の与えすぎか、根腐れで枯らしてしまうことが過去何度もあり、申し訳ない気持ちとともに、次は、次こそはと失敗を繰り返すうちに世話をそれほどやかなくても枯れないサボテンに行きついたというわけ。
今現在はガジュマル、パキラ、ソングオブインディア、ポトスなどなど大小さまざまな植物と暮らしている。
失敗を糧に気付いたことは、10~20センチ程度の植物はやはり耐久性が弱く、目に見えて元気がないと目視で分かる頃にはすでに手遅れだった、ということが多い。なので、値段は多少上がるが、幹が木質化した大きめのしっかりした植物を買うことが長く一緒に暮らせるコツだろう。
植物が部屋にあるメリット
植物が人体に及ぼす好影響はいくつかある。植物の種類によって、また大きさによって、風水的な観点などもあるのだろうが、よくよく言われているのが以下の3つだ。
ストレスホルモンの軽減効果
屋内空間における植物のストレス緩和効果に関する実験で、視界に植物が入るグループ、入らないグループに10分間の計算テストでストレスの負荷をかけた後、唾液中にあるコルチゾールというストレス物質の分泌量を調べた。
テスト前後のコルチゾールの増加率を調べたところ、植物が視野に入るグループは入らないグループに比べ1/3程度の増加率であった。すなわち、ストレスが軽減されていることを意味している。
疲労回復効果
現代人の生活習慣病ともいうべき、スマホやパソコンによるデスクワークで無意識に肩の僧帽筋や首に力がはいってしまうことが多い。
すると、どうしても猫背のバランスを、頭を前に出すことでカバーするようになる。頭を1センチ前にせり出すだけで首に30kgの負担が大きく掛かると言われている。首の頸椎が圧迫されることで眼精疲労の要因になる。
根本的な解決ではないが、このような眼精疲労や上述したストレスホルモンの緊張緩和効果で視覚疲労の回復がある。
空気清浄効果
観葉植物は以下の4つのステップで、主に空気の浄化を図っている。
・葉の裏面の気孔から二酸化炭素と一緒に空気中の汚染物質を吸収する。
・吸収した汚染物質を根っこへ運ぶ。
・根っこ周辺の微生物が汚染物質を分解し、無害化する。
・葉からの蒸散により、水蒸気だけを空気中に放出する。
新築では壁の溶剤が人体に悪影響を及ぼす場合があると注意を受ける場合があるが、シックハウス症候群に代表されるホルムアルデヒドやアンモニアといった化学物質を分解・浄化する力を持っている。
緑はありすぎてもストレスを感じる
最近では前述したリラックス効果を期待してか、オフィスに緑を取り入れるという企業も増えてきている。
じゃあ緑をたくさん置けばいいじゃないか、と思うが実際そうではないことが研究で明らかになっている。
豊橋技術科学大学の松本博名誉教授の調査により、オフィス内の緑視率が高すぎる場合はむしろ生産性や空間への満足度が低下してしまう、という調査結果が報告されている。
研究の結果、オフィスにおける緑視率の最適値は10~15%であると導き出されていて、この数値の範囲において従業員の生産性が最も高まったと報告がなされている。
原始の時代に武器を持たなければ自然界の動物たちと対等に渡り合えなかった狩られる側だった人類の系譜を考えると、見通しの悪い鬱蒼とした森のような、周りに緑しかない環境でリラックスができないというのは、実験の結果のみならず、どこか納得してしまうのは私だけだろうか。
いきなり見えない死角から肉食獣が襲ってくるかもしれない、という本能的な恐怖とでもいうのだろうか。
とはいえ、周りに緑しかないという環境は現代人にとってもストレスであり、ほどよく緑に囲まれるというのが、人に良い影響を与えることが分かる面白い研究結果だ。
植物との暮らしは自らを客観視できることにある
ストレス緩和や空気清浄効果など書き連ねたが、実際に良い効果があったのかどうか。一個人の植物愛好家が確かめるすべはない。ここからは私個人が考える植物があると良い理由である。
それは「動物とはまったく異なる時間軸の生体と暮らすことで自らを客観視できるようになる」だ。
人は時計やカレンダーで時間の流れの早さ、遅さを認識するが、自宅の限られたスペースでは、毎日変わらない景色、一定の時を刻む秒針、昨日と何も変わっていないとさえ錯覚してしまう。
それはたとえ家の外に出ても同じだったりする。
厳密には我々人間も細胞分裂を繰り返し、筋肉を増やしたり、脂肪を蓄えたりして確実に変化をしている。ただ、成長期真っ盛りの子供ならまだしも大人になれば大人になるほど、どうも日常生活ではその変化を実感しにくい。
成長期を終えた大人であっても細胞が3か月で丸ごと入れ替わるというが、それを体感することは極めて困難だ。
でもそこに植物がいると長い一定の周期リズムで着実に新芽を伸ばし、成長していく様子を体感することができる。その様子を観察する自分の存在をそこで改めて認知できる、というワケだ。植物の成長スピードは極めてゆっくりだ。だからこそ、成長が目に見えて嬉しかったりもする。
これが植物の本当のメリットなのではないかと思う。