目的の解像度が低い投資は浪費をしている ~アフターコロナの投資的思考~

目的の解像度が低い投資は浪費をしている ~アフターコロナの投資的思考~

コロナウイルスによる株価大幅下落がきっかけとして、株式などをはじめとした投資を考える人が増えています。実際に2月以降にネット証券の新規口座開設数が急増したということが取り上げられています。

コロナショックでネット証券口座急増 今が投資を始めるべきタイミング?
コロナショックで株価が大幅に下落したことをきっかけに、ネット証券口座の新規開設が急増しています。株価下落をチャンスと考えた人や、不安心理から資産形成について考えた人が増えたことが原因と思われます。新規口座開設の増加は2月から始まっており、ちょうどコロナショックによる株価下落と同じタイミングになっています。歴史を振り返っても、株価が大幅に下落した後は、急上昇するケースが多く、コロナショックのような出来事がチャンスになるという面があるのは事実です。

https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/20200507-00010003-wordleaf-bus_all

今回の一連の結果として、いわゆる「有形資産への投資」が増加した側面が注目されていますが、これまで投資に興味がなかった人が金融市場に参加することを良いことと思う一方で、実はそもそも世の中にいる一人一人の行動がすべて投資によって行われていることを忘れてはいけません。

つまり、人は誰しも自分という資本に投資する投資家であり、経営者や会社員、学生だろうが属性に限らず、投資思考の観点は持っておくに越したことはないと言えます。

ただ、投資と聞くと次に思い浮かぶのは投資詐欺というワード。私が実際にそうだったように、投資=良くないものと頭ごなしに体が拒否反応を起こしてしまう人も多いのではないでしょうか。

投資が注目されている今だからこそ、改めて、投資の在り方について、考えていきたいと思います。

投資対象となるのは有形か無形の大きく二つ

何に投資するか、またはしているかというのは、主に有形と無形資産の二つに分かれます。当たり前のことと思われるかもしれませんが、改めて以下に書き出してみます。

<有形資産>

  • 株、債券、不動産などの金融商品
  • 会社の事業
  • 生命保険や養老保険、年金
  • 定期預金

<無形資産>

  • 教養、知識、経験
  • 資格
  • 時間
  • 健康
  • 家族、友人、仕事のコミュニティーの信頼関係

無形資産においては、形がないことで結果・成果といった経済的や金銭的なメリットが可視化されにくい特徴があり、有形資産と比べて疎かになりやすいと言えますが、実は、有形と無形の両輪を活かした健全な投資行動こそが、これからの人生100年時代を生き抜く重要なスキルになると考えています。

目的のない投資は浪費と同じである

色々と調べたり、考えていくと、有形無形問わず投資行動には長期的、かつ未来的な視点による積み重ねが必要だと考えざるを得ません。

それはなぜか、短期的な投資というのは、必ずと言っていいほどそのゴールが金額や数といった量的なものになり、量的な満足には際限がないからです。つまり、目的のない投資は浪費(現在の満足のための消費)と同じなのです。

当然、投資元金が大きければ数か月~1年程度の短いスパンで大きなリターンを得ることができるかもしれませんが、資産は簡単に増えないし、増やせません。当然、利回りが高い金融商品もあるにはありますが、トレードオフで逆に元金が目減りするリスクが付きまといます。

そこにベットするかはリスクの兼ね合いも含めて目的次第ということになりますが、前述したとおり、短期的で量的な目的は継続性や連続性がないと言えるので、必ずどこかに歪みが生まれます。

数字も確かに重要な指標ですが、投資の大前提は時間(=複利)を味方にした総量が重要です。例え話としてしっくり来るかどうか、人によって分かれるかもしれませんが、これは筋トレやダイエットも同じことだと言えます。

ただ単に1週間や1ヵ月運動量や食事量を変えたところで、これまでの人生の長さを考えると体にとっては一瞬の揺らめきみたいもので、元の生活に戻せば体もすぐ戻ってしまいます。逆に急激にストレスを掛ければ掛けるほど、精神的な負荷がのちにリバウンドを誘発してしまうこともあります。

継続性がある、積み重ねることができる。これが重要でまさに「継続は力なり」と言えます。

失敗のほとんどは手段の目的化

実際に私自身のケースですが、今回のコロナウイルスをきっかけに保険の見直しをしました。このコロナ禍で改めて自身の身の回りの棚卸をしたことがきっかけです。

保険に加入したのは、前職の会社で多額の報奨金をもらった年のことで、一時的に収入が大幅に上がったため、人事から生命保険料控除の活用で保険加入を勧められたことと個人的にも高額医療費や将来への漠然とした不安を持っていたので、外貨建て養老保険や終身保険、入院保険などに加入しました。

当時は税金や保険のことはほとんど無知に近く、万が一のためや貯蓄というもっともならしい理由と所得が一定額控除されて税金が下がるという考えから何年も続けていました。

今現在でも必要な保険には入っておくメリットはあると考えていますし、金銭的な利益が得られることも十二分にありますので、保険の存在を否定するものではありません。ですが、ふたを開けてみる保険料控除については所得税額へのインパクトは少なく、将来への漠然とした不安への安心材料というのも保険にそこまで頼る必要がないということが分かりました。

最終的に後押しになったのは、保険料の支払額や受取額の試算をすると保険料の約4割が保険会社の手数料として支払われている点、最終的な利回りは大体2%ちょっとという数字的な根拠でした。 いつしか保険に入っている手段が目的化していて、当初の目的を達成するにはもっと別の良い方法があることに気付けなかった。

言うなれば、目的の解像度を上げる作業を怠っていたことにあります。

さいごに

価格が低いから投資を始めるというのは、始めるきっかけとしては良くても、それだけでは短期的な量的指標を目的にした投資行為になり、安物買いの銭失いになりかねません。

資本市場の原理原則として、商品を安く買って高く売るというのは至極真っ当な行為ですが、「何に、どのように投資するか」には「なぜそこに投資するのか?」が絶対に欠かせません。

もしかすると、私が見直した保険と同じように、その目的を達成するための投資先は有形資産ではなく、目には見えない自己研鑽という無形資産に時間とお金を投資した方がいいかもしれません。

人は誰しも自分という資本に投資をしている投資家であり、「自分に投資をすることは、どう生きたいかの裏返し」でもあります。それには投資先を見極めること以上に投資目的の解像度を上げることが重要なのです。

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