結果とプロセスどちらが大事か

結果とプロセスどちらが大事か

結果とプロセスはどちらが大事か、このことをテーマとして、度々社会では議論が巻き起こります。

売上を上げて株主に利益を還元してナンボという資本主義社会では、結果を出すことにとにかく重要視する傾向が強く、これは長い歴史が結果を生み出してきた勝者によって、作り上げられてきたことも一因だと言えます。

こと営業活動においてもそれは同じで、結果、すなわち売り上げや数字にまつわるものを重要な評価指標として設定をしている会社がほとんどではないでしょうか。

私自身10年以上前からこの答えは変わっていません。

学生アルバイト時代に感じた違和感

原体験というか、この答えがより明確になったのは飲食店でアルバイトをしていた学生時代にさかのぼります。

そのお店は50席もない小さな規模で個人経営に近く、高級店と何ら遜色ない素材や料理を比較的安価で提供する人気の居酒屋でした。10年以上前の当時ではまだ珍しかった手書きによる日替わりメニューや、その日のおススメが書かれている1枚しかないメニューは取り合いになるほど。

その人気たるや凄まじく、土日は3回転以上、ド平日でも2回転は満席で稼働していました。最寄り駅からは徒歩15分程度あり、奥まった路地に位置していて、一見客はほとんど来店しない。口コミや紹介、常連客によってその地位を築いているお店でした。

しかしながら、働いている間、店長の運営方針と自らが思う飲食店のあるべき姿との差異をいつも感じていました。それは、お客さん同士で肩が当たるほどテーブルやカウンターに椅子を敷き詰めて半ば無理やり押し込む、売上至上主義的な考え方によるものでした。

「ちょっと狭いんですけど…」と前置きをいれて席まで案内すると「ここだったらいいです…」とお断りされることは1日何回もあったり、「一旦、こちらで始めていただいて、広い席が空いたらそちらへご案内します」という切り返しが常態化していました。

また、食べ物や飲み物が残っているにも関わらず、片付ける、会計を急かす、といった対応にも違和感を感じました。店の経営にあたり、売上を多く上げることは非常に大切であり、決してないがしろにしてはいけないのは、学生アルバイトの身分でも“それなりに”理解はしていましたが、「窮屈で落ち着けない」「急かされてゆっくりできない」のは店の強みを軽く帳消しにするほど「マイナスブランディング以外の何物でもない」そう考えていました。

それは、初見のお客さんが次もまた来たいと思ってもらえるよう、2回目のお客さんが次は家族や友人、恋人を連れてきてもらえるよう。美味しい料理と気の利いた接客、活気のある店内で“心地良い時間”を過ごしてもらうことの方が、無理やり詰め込んで1日2~3万売り上げを上乗せすることより重要である。と考えていたからにほかなりません。

2回目に行くかどうかは減点方式で決まる

10年前と今現在を比べて、飲食業界の大きな違っている点、それはクオリティの向上と、オリジナリティの深化です。つまり、料理の美味しさ単体では選ばれない時代であり、立地、価格、従業員との関係性、接客の気遣いやサービスなど、その店の“らしさ”をもって、総合的に選んでいるということ。

業界に携わる方々の日々の努力のによって一般の目や舌が肥えてきて、美味しくない料理を提供する店は自然と淘汰されていくのは当然のことながら、美味しい料理の提供は最低限担保されているラインで、接客サービスがそこそこ良いというのは、低価格帯を売りにしているチェーン店を除いては、標準として当たり前の評価として認知されている状況があります。その上で、その店でお金と時間を消費する理由を飲食物以外に求める人が増えているのです。

全ての飲食店がそこそこの及第点を取るようになると、どうなるでしょうか。 “店の評価”は減点方式によって評価されます。

  • 質に対して、価格がちょっと高いな…
  • 美味しいけど、わざわざここまで来るほどでもないな…
  • スタッフの人が呼んでも全然注文取りに来てくれないな…
  • 忙しいのは分かるけど、一杯目の飲み物の提供が遅いな…
  • 料理の提供が遅いな…
  • トイレが汚いな…

ここまではっきりと理由を言語化しないまでも、誰しもが無意識にこのような評価基準を持っていて、それらを差し引いた結果、自分なりの平均点を上回ったところが“また行くお店”として、選ばれるようになるのです。

体験価値の積み重ねで顧客満足度を上げる

では、これらに対抗するにはどうしたらよいか。それは体験価値の積み重ねによる加点です。月並みですが、顧客満足度を上げる、とも言い換えられます。

飲食店の主力商品である“料理”だけでは圧倒的な差別化が出来なくなってきた今の時代は、行きたくなるような理由を一緒に作ってあげることこそがカギになります。

これは売上を上げることを目的とした経営では、絶対に為し得ない。あくまでも適切なコミュニケーションの結果、売り上げが上がるという副作用として捉えることが必要なのです。

このコロナ禍になる今年初め、久しぶりにそのアルバイト先に顔を出したのですが、残念ながら当時のような活気はなく、数多くいた常連客も姿を消していました。飲食店の10年生存率が1割以下と考えると続けているだけでも十分すごいのですが、お客さんの感情や体験にフォーカスしていた場合に“今”がどうなっていたのか、非常に気になるところです。

さいごに

10年以上前から変わらない答えは、プロセスを重視するべき。当時1アルバイト身分では売り上げや雇用形態の関係から責任もなく、求められてもいないことから、歯がゆい思いを多々しましたが、この数字化できない顧客満足は売り上げとして、後から必ず付いてくるものだと今でも強く信じています。

ただし、適切なプロセスであったか否かをきちんと判断する意味でも、結果から目を背けてはいけません。

皆さんも、興味があって足を運んでみたものの2回目に行こうと思わなかった店の理由、2回目に行こうと思った理由を言語化してみると、意外と単純なことだったりします。例えば、「店員さんに元気があって、ノリが良かった」なんてことだったり。

何気なく無意識に選んでいる理由を言語化してみると自分の違った一面を知ることができるかもしれません。

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