新型コロナウイルスで新卒一括採用廃止の流れはより一層加速する

新型コロナウイルスで新卒一括採用廃止の流れはより一層加速する

今年の初めに新卒採用のおける大学生と企業のミスマッチをなくすことを目的とした、対話形式のインタビュー企画を制作していたところに、新型コロナウイルスが襲ってきて、企業の採用活動の在り方が大きく変わりつつあります。

つい先日には、ANAが来年21年卒の新卒採用を中断させたことが大きく報道されました。

ANAHD傘下のグループ社員は約4万5000人。今回の拡大で、大半が一時帰休対象になる。役員報酬の減額も始めており、管理職の賃金削減などの人件費抑制も検討していく。

新卒採用については、「抑制していかざるを得ない」(福澤氏)と述べ、採用数を抑える可能性を示唆。2020年度の新入社員は、38社3686人だった。

aviationwire:https://www.aviationwire.jp/archives/201572

飲食業界においても緊急事態宣言発令以降、営業自粛のあおりを真っ先にうけていることは言うまでもなく、既存の雇用を守るので手一杯でよほど体力のある企業でない限り、新規採用数を減少させたり、見直す企業が出てくることは間違いありません。

また、この動きとは別に昨年4月、2021年春以降の新卒採用が通年採用に移行していくという合意が経団連と大学によってなされました。

今回は新卒一括採用から通年採用への雇用慣行の遷移と、通年採用による学生への影響について書いていきます。

知らない人のための新卒一括採用のざっくり背景

新卒一括採用は、日本特有である年功序列と終身雇用によってつくられてきました。企業が新卒学生に対して、定年まで働き続けることを前提として、若くて安い労働力を確保するというもの。

「ポテンシャルの高い若年労働力」の確保を目的としたものとして、入社後の研修や育成を前提として行われる一括採用と、育てた人材が早期退職しないように、長く働くほど給与が上がり、多額の退職金が受け取れる給与賃金体系を合わせたシステムのこと。

これは、戦後の高度成長期に完成され、今現在でも雇用慣行として続いています。

新卒一括採用の巷でよく言われているメリットやデメリット

新卒一括採用におけるメリットとデメリットを簡単に羅列していきますが、様々なところで多く書かれているとおり、そのメリットの多くは企業側が享受するシステムであると言えます。また、表裏一体でメリットは他方でデメリットにもなり得えます。

企業側のメリットは以下のとおりです。

  • 組織としての一体感や、組織への忠誠心を高める
  • 年に一度なので、会計処理が楽で採用コストを抑制できる
  • 採用に合わせて人事異動を4月に集約することができる
  • 入社後に同時期に研修をするため教育コストを圧縮できる

この裏側で起きるデメリットとして、人の流動化が起きにくく、転職市場が活性化しないことが起こります。新卒採用活動を取り巻く経済活動への影響です。特定の一定期間に繁忙が集中してしまって、無駄や機会損失が多く発生しています。

一方で、学生側の新卒一括採用のメリットですが、企業側に比べて取り立てて特にないのではないかと思っています。

専門性やスキルがなくても人間性やポテンシャルで採用してもらえる。ということがとあるサイトで挙げられていましたが、転職市場においても一部のハイクラスを除けば、人間性やポテンシャルで採用してくれることが十分にあります。

また、新卒ブランドがあるからとりあえず採用してもらえる。ということもメリットなのかもしれませんが、入社後3年以内の離職率が30%以上というデータもるくらいですし、周りが一斉に就職活動に動き出す焦りなどから、企業へ入社することが目的化してしまって、企業と学生のミスマッチを増やしてるということもい言えます。

通年採用は学生にとってメリットしかない

個人的には、一括採用から通年採用への移行は学生にとってはメリットだと考えています。

それは、圧倒的に選択の幅が増えるからに他なりません。具体的な影響としては、在学中での起業や留学など自己に投資する大学生が増えます。

大学3年生の新卒採用活動は強制的に足止めを食らう人生ゲームのストップマスのようなものだと考えています。社会がそういうルールだから、みんなやっているからと誰しもがそのタイミングで就職をするかしないかの選択を立ち止まって考えます。

不安を感じやすい遺伝子を持つ民族として言われている日本人ですので、新卒採用活動という型にはめられたい。自分で自分のことを決められないという若者が路頭に迷うということ起きてしまうかもしれませんが、我々を取り巻く5年後、10年後が分からない今、敷かれたレールの上を走っていればよい時代はとっくのとうに終わりを告げています。

つまり、新卒一括採用の廃止によって、企業への就職はゴールではなく一つの選択肢であり、ただの通過点であるということが、より明白になり、それを早いタイミングで気付けるようなった学生が行動を起こすのではないか。ということです。

きっと、夢や挑戦したいと思えたことも周りの同調圧力や、将来や失敗を恐れる不安から一時の精神の安定を求めてとりあえずの就職活動に舵を切る学生が減少することでしょう。

自分の可能性を広げるための思考法については、こちらの記事が参考になると思います。→自分の可能性を広げる思考法のファーストステップ

終身雇用という人材の出口が機能しなくなってきた今、人材の入り口である新卒採用と、新卒採用を根幹にしてきた組織体系の見直す必要が出てくることは間違いありません。ただただ、悲観するのでなく、それによるポジティブとネガティブの作用を冷静にしっかり見極めることが重要だと言えます。

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