弱い者が生き残るためのランチェスター戦略

弱い者が生き残るためのランチェスター戦略

皆さん、ランチェスター戦略はご存じでしょうか。

元をたどると第一次世界大戦の戦果を元に考えられた軍事戦略がビジネスへ転用されたもので、その概念はその名前を知らなくても当たり前のように世の中に存在していて、普段我々の思考パターンとして実は実践しているモノでもあったりします。

これを意識的に体系に当てはめて実践できたとき、より良い商品やサービス開発、企業活動につなげていけるような枠組みになるものだと考えています。

今回は、そのランチェスター戦略について簡単ですが、書いていきます。

知らない人のためのランチェスター戦略

ランチェスター戦略はざっくりいうと差別化の戦略です。より細かく言うと、「弱者が強者に勝つための」「強者が弱者を駆逐するための」戦略と言えます。

戦争シュミレーションゲームの盤面のようなものとして、理解してもらうと分かりやすいかもしれませんが、ランチェスター戦略の原理法則としては、以下の二つです。

第一法則:局地の接近戦で拳銃や剣による戦い
     人数が多い方が有利、武器の性能が高い方が有利になる。

第二法則:広域の遠隔戦でミサイルによる戦い
     人数が多い方が有利、資源が多い方が有利になる。

例えば、同じ商品を製造している大手企業(強者)と中小企業(弱者)が販促活動をしていこうと考えたとき、強者は第二法則で戦った方がより弱者のシェアを奪うことができ、一方で弱者が行き残るためには第一法則で戦って勝っていくことが必要になるということです。

実際にベトナムがジャングル局地で展開したゲリラ戦がランチェスター戦略でいうところの第一法則であり、圧倒的に人員と資源が勝るアメリカに勝ちうる唯一の方策だったと言えます。

ゲリラ戦は何となくわかったけど、企業活動として、第一法則で勝つというのは具体的にどういうことか、ですが、主に以下の3つがあります。

強者が提供できないサービスや商品を作る
圧倒的に質を上げる
ターゲットのセグメント(地域、性別、年齢、職業など)

ニッチ戦略でも同じことを言っていますが、ランチェスター戦略においても市場や商品のターゲットを細分化して、その限られたマーケットでシェア1位をとることが重要だと説かれています。

つまり、資本力に差がある相手が同じ盤面にいるのなら、面の取り合いをするのではなく、点を抑えていくという考え方が非常に重要になります。

雑学としてのランチェスター戦略

ランチェスター戦略では「シェアをどれだけ取っているか」というのが重要な指標とされています。

ただし、普段生きている中でこのあたりの知識を実践活用するような人は極めて少数でしょうし、知っていても何の得にもならなそうな情報ですが、知っていたら世の中が「あぁ、そういうことか」と俯瞰して見れるようになっていくんじゃないかと思いますので、簡単にご紹介します。

市場占拠率

ランチェスター戦略では目指すべき市場占拠率の目標値として、7つの節目があります。

更にそのうちの上位3つの目標値が三大目標数値と言われていて、大手企業はこのあたりの目標値を目指して大局的にシェアの奪い合いをしているということが言えます(※三大目標数値だけ抜粋します)。

上限目標値73.9%……絶対的に安全な地位

安定目標値41.7%……圧倒的に有利、3社競合の場合は首位独走の条件

下限目標値26.1%……強者の最低条件、これ以下は不安定な弱者

市場の占拠パターン

次に市場の占拠パターンです。以下の5つのパターンに分類されます。

分散型……すべてが26.1%未満

二大寡占型……上位2社の差が1.7倍以下で2社の合計が73.9%以上

相対的寡占型……上位3社の合計が73.9%以上で、2位と3位の合計が1位を超える。

絶対的寡占型……1位が41.7%以上のシェアで2位と1.7倍以上の差がある

完全独占……1位が73.9%以上

これらをちょっと知っていれば、新聞や経済ニュースで出てくる割合をこれに当てはめて、そのニュースの内容がより面白いものと感じるかもしれません。また、もしかすると有名企業のキャンペーンやプレスリリースの裏側にある意図を意味をいち早く理解できるようになれるかも。


これから楽天が携帯事業に参入しますが、今の大手3社のシェアと楽天参入後の市場占拠のパターンはどう変わっていくでしょうか。また、バラマキで過熱化しているキャッシュレス決済の今とこれからは…などなど、弱者側と強者側の視点を与えてくれる非常に面白い指標であるとも言えます。

弊社のランチェスター戦略は「課題の解決」

先日とある企業から営業資料制作の相談があり、対面で打ち合わせをした時の事です。より営業活動がしやすいように以前作ったデザインをリニューアルしたいというオファーでしたが、

・「誰が」「いつ」「どのように」使うか。
・そのサービスの置かれている状況、課題や問題は何か。
・これからどういう風になりたいか。

を聞いていくと色々と問題が浮き彫りになってきました。

そのサービスは無料であり、導入コストもかかるものでなく、まさに「導入しない理由がない」サービスなのですが、一方でいかに「使いたい」と思わせるか、「使わないといけない」と思わせるか、がとても重要で購買行動の一歩を最後に後押しさせる設計が必要だと考えました。

その上で、

・補助的な資料として使える紙面構成に変えた方が良い。
・シェアの高さや自社の強みをクロージングに盛り込んだ方が良い。
・請求書に同封させるなら、チラシではなく「お客様へのお知らせ」とお手紙にした方が良い。
・細かい機能や仕様の説明は提供側でなく、第三者視点で決める(その説明がほんとに必要か?)。

などなど、30分会話をした程度ですが、こうした具体的なアイデアをその場でお伝えしました。前回同じ金額でお願いした制作会社さんは1ミリもこのような話はされなかったそうです。

すなわち、弊社のランチェスター戦略における第一法則の主戦場は、「問題と課題を本気で解決したい困っている人」で、武器は「最適な情報成果物の提案」だと言えます。

さいごに

と、カッコよく言ってはみたもののランチェスター戦略~云々は完全に後付けでして、元来このようにしていただけです。つまり、すでに当たり前にやっていることが実は差別化(少数派)なのかもしれないし、今目の前にいる人はその当たり前を知らない人かもしれない。ということ。

このようにランチェスター戦略は、自分の今置かれている状況、同じ盤面で有利に戦っている人は誰か、戦っている場所、持っている武器、を冷静に考えるための第三者視点を与えてくれるフレームワークです。

ざっくりで、細かく伝えきれてないところもありますので、もっと知りたいと思われた方は、この機会にぜひランチェスター戦略をチェックしてみてください。

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