相手に提示する数はいくつが最適なのか

相手に提示する数はいくつが最適なのか

提案資料を作ったり、サービスを紹介する時、はたまた手順のフローを説明するとき、なんとなく決めている数。3つが良いと聞いたことがあるかもしれないが、感覚的にもどこか納得してしまっているのではないだろうか。

結論から先に言うと、

・相手にしっかり選んでもらいたいときは厳選した提案を3つまでにする。
・数の多さをアピールしたいときは少なくとも6つ以上を挙げた方がいい。

である。

記憶の限界であるマジカルナンバー

人が短い時間で記憶処理できる内容には元々限界がある。

数十秒から数分で忘れてしまう記憶のことを短期記憶というが、成人における短期記憶の容量は7±2(5~9個まで)程度といわれていた。これは心理学者のジョージ・ミラーが提唱したもので「マジカルナンバー」と呼ばれている。

ところが、2001年にミズーリ大学のネルソン・コーワンが新たにマジカルナンバー4という論文を発表した。現在、短期記憶の容量は4±1(3~5個まで)というのが定説になっている。

1個は「1つのかたまり」としてカウントする。

例えば、0334095156という10ケタの番号の羅列があったら、そもそも覚えることが難しいが、10個の数字ではなく、「03」「3409」「5156」といったように3つのかたまりとして認識することで見やすく、覚えやすくなる。

7±2のマジカルナンバーで数字の羅列をかたまり化させると以下のようになるが、

「03」「3409」「5156」「150」「0011」「3730」「6155」

これだと到底簡単には覚えられそうもなく、瞬時に記憶することは難しい。マジカルナンバー4±1が正しそうだということがこれからも分かる。

なぜ、相手にしっかり選んでもらいたいときは厳選した提案を3つまでにするのか?

これは「短期記憶の最小数である3つに留めることで相手の記憶に圧倒的に残りやすく、かつ、選びやすいからである。」

なぜ、数の多さをアピールしたいときは少なくとも6つ以上を挙げた方がいいのか?

これは「短期記憶で記憶できる最大数を超えているので、記憶には残らないが数が多いという印象を与えることができるからである。」

マジカルナンバーに関する余談

人の覚えやすい数やかたまりは4±1であるが、我々の身の回りでもこのマジックナンバーが広く普及していることをご存じだろうか。

例えば、サービス名や企業名、造語など挙げればキリがない。思い返していただきたいが、良く会話に出てくるワード、覚えている企業やサービスは大抵3~4文字の日本語やアルファベットの略称によるのではないだろうか。

音感の良さ、検索のしやすさといったSEO対策という側面もあるだろうが、何より最小限の情報量に留めていることで記憶に残りやすいために大多数の認知、人気に繋がっているのである。

つい最近FacebookがMetaに社名変更したことも実はマジカルナンバーを意識したのかもしれない。

記憶に関する余談

記憶を定着させるためにはどうしたらいいのか。それには、覚えておくためのリハーサルが必要となる。

例えば、何度も口に出したり、メモに書いたりすることで短期記憶の保持時間を延長させることができる。これを維持リハーサルというが、中断した途端やはり数秒から十数秒ですぐに忘却の彼方に行ってしまう。

短期記憶を長期記憶にするためには、覚えている情報を他の知識や経験と関連付けたり、情報を分解して再構築することが効果的だと言われている。これを精緻化(せいちか)リハーサルという。

記憶にまつわるもので、CBCドキュメンタリーにとても興味深い動画があったので紹介したい。

年間100万人に数人といわれるヘルペス脳炎による後遺症で、記憶を司る海馬に障害があり、7秒後には起きていたことを忘れてしまうとある女性の密着映像だ。

病気になる前の記憶は残っているが、新しい情報は覚えておくことができない。そんな日常ではすべてのことをメモに残して生活している。1日の終わりにはすべてのメモを整理し、振り返りを行う。

記憶はすべてメモに残しているが、メモを見返してもその記憶が蘇ることは一切ない。とても儚くて、見ていて切なくなるが、生きる喜びや楽しみを見出している姿は逆に元気をもらえる。

記憶とは何か?自分とは何か?生きるとは何かを考えさせられる、そんなドキュメンタリーだ。

【前編】7秒後には「今」起きていることを忘れてしまう・・・そんな病と向き合い生きる女性に長期密着

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