セールスコピーライティングの設計図

セールスコピーライティングの設計図

企画書や営業資料、フライヤーにウェブサイトなど、コピーライターで無くともそれに近い働き、つまり文章の作成を要求されるシチュエーションは意外に多い。

しかし暗に文章を作成しようとキーボードに手を置いてみても、なかなか筆が進まず苦労された経験があるのではないだろうか。

闇雲にゼロから文章を生み出すのはなかなか骨が折れる。これをサラサラとこなしているプロのコピーライターはさすがという他ない。そんな感想を抱かれていると思う。

だが、実はセールスのコピーライティングにはセオリーが存在する。
それを理解していれば、なんのことは無い。パズルを解くように簡単に文章が作れるようになる。

今回はセールスコピーライティングに最低限必要な3つの要素を解説していく。



パーソナライゼーション

パーソナライゼーションはマーケティング用語。その意味はwikipediaによると「個々人向けにカスタマイズすること」とある。

これだけみるとなんのこっちゃよくわからないが、なんのことはない。ターゲットの持つステータスを2つ以上組み合わせることで、パーソナライゼーションは完了する。

これは、訴求したい人に向けて「あなたに宛てたものだ」と認識してもらう重要な要素である。

例えば、道端で「日本人の皆さん!」と呼びかけてもおそらく誰一人として自分が呼ばれているとは思わない。しかし「渋谷区にお住まいの女性の方!」と呼びかければ数名は自分のことかも?と興味を持つ。
さらにもう少し絞って「渋谷区にお住まいのお子さんがいらっしゃる女性の方!」とまで限定すれば、大抵の人は自分の事だと認識する。

つまりパーソナライゼーションは、ユーザーにそのサービスが自分向けのものだと認識してもらうための極めて重要な要素である。これが欠けているとそもそも興味をもたれない、先に読み進めてもらえない。

「極めて重要」などという言葉では生温く、「要不可欠」と言ってもいいのだが、マーケティングに造詣が浅い人であるほどターゲットを絞ることに抵抗がある。情報の矛先を限定してしまうことによる機会損失を恐れているのだと思うが、パーソナライゼーションがされていないとそもそも読者がゼロになってしまうので、必ず遂行しなければならない。

ベネフィット

ベネフィットは直訳で「利益」。ユーザーが享受できる価値のことである。

こう説明するとよく勘違いされてしまうのは、ここで言う価値とは如何にその製品やサービスが優れているのかというポイントではない。あくまでユーザーが実際に得ることのできる利益にフォーカスする必要がある。

例えばあなたが新開発した車を売りたいのなら、「新仕様の自然吸気エンジンにより低燃費でありながら〇〇馬力を実現。空間効率を最大限に高める独自の設計で広々とした室内」などと謳ってはいけない。

やりがちなコピーライティングだと思うが、これでは伝わらない。この項目でユーザーに伝えなくてはいけないのは、その性能がユーザーの生活や体験にとってどのようなベネフィットを提供できるのかという点であり、製品の性能や強みそのものではない。

ダイハツ タントの宣伝方針を思い浮かべてみるとわかりやすい。

タントはスーパーハイトワゴンという、軽自動車でありながら広々とした車内設計が売りの車だが、2003年初代タント販売開始当初「親子にピッタント」というコンセプトで、ユーザーの生活にフォーカスした広告戦略を展開した。
工藤静香さんを起用した親子モチーフのCMに覚えのある人も多いと思う。

ダイハツ タントTVCM「親子にピッタント」

今では当たり前に散見するコンセプトだが、当時はこれが斬新だった。そしてタントは販売開始から現在まででもおよそ16年間というロングセラーを記録する大ヒット商品となり、スーパーハイトワゴンというジャンルのパイオニアとして定着している。

このように、製品の性能ではなくユーザーが実際に得られる利益を価値としてフォーカスすることで、コピーは格段にわかりやすく、受け入れられやすくなる。

製品やサービスそのものよりも「それを使っている自分」を想像してもらわなければ、購買行動には決して結びつかない。

リーズン

最後にリーズン。マーケティング界隈では「リーズニング」と呼ばれることもある。意味は「理由」である。

パーソナライゼーションとベネフィットの2項目に対して、その根拠や背景を説明することによって、信憑性を増し、納得してもらうことを目的としている。

開発の背景や想いであったり、資料などでファクト(事実)を提示したり方法は様々だが、この項目の存在意義は上記2つの要素について腹落ちしてもらうための後押しをすることにある。

「そうか、そんな背景でこういうユーザー層に向けた製品を開発したんだ」と共感してもらうのもこの項目の役割だし、「そういう技術でこのベネフィットを実現しているのだな」と納得してもらうのもこの項目の役割。または期間限定の値引きなどが訴求内容に入っているのなら、なぜ値引きをしているのかのリーズンを明確にしないと、ユーザーは納得しない。常時閉店セールをしている怪しい小売店のように見られてしまうので注意して欲しい。

ベネフィットの項目で除外した、製品やサービスの性能に関する情報は、この項目であればあるいは機能的に働くこともある。ただし、専門的すぎてよくわからない語彙を使うことだけは避けたほうがいい。
その理由は以前「誰でも実践できる効果的なコピーライティングの極意」という記事で解説しているので、一読することをお勧めする。

3要素を抽出すると設計図が見えてくる

白紙とにらめっこしながら「さぁ自由に書いてみよう」と意気込むとコピーライティングは非常に難しい。

しかし、上記で解説した3つの要素「パーソナライゼーション」「ベネフィット」「リーズン」をそれぞれ書き出してみると、目的が明確化され、盛り込むべきキーワードが可視化する。これがコピーライティングの設計図だ。

もちろん、プロはこの他にも様々なテクニックを用いて文章の信憑性や説得力を強化し、喚起を促しているのだが、経験上この3つはその中でも最もなくてはならい項目として抽出した。

まずは文章を書く前に、それぞれの項目を箇条書きで書き出してみてほしい。白紙だったはずの紙が、途端に道筋立てられた設計図に見えてくるはずだ。

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