満足度が高くてもリピートしない理由は”〇〇がないから”

満足度が高くてもリピートしない理由は”〇〇がないから”

美容室、マッサージ、飲食店などサービス業に属する様々な業態の店があるが、1回試しに行ってみて、2回目があるかどうか。この差はかなり大きい。だが、この差を言語化したことがないことにふと気付いた。

なぜリピートしないのか、リピートするお店や商品はなぜリピートするのか。改めて、この点を深堀っていく。

そもそもリピートしないのはなぜか

まず、はじめにリピートしない理由について。

結論となるが、リピートしないのは「する理由がないから」で、総じて、以下の2点に集約できる。

・満足度が低い
・2回目を利用する意義や目的がない

である。

サービスと提供価格の妥当性

満足度を決定する上で重要度が高い指標の一つに「サービスと提供価格の妥当性」がある。

コストパフォーマンスとも言い換えられるが、競合や類似サービスとの相対的な比較と、実際にサービスを受けた時の心証といった絶対的な評価からなる。

しかし、これには一つ問題がある。

仮にサービスと価格に十分に妥当性があり、競合よりも優位な価格を設定していたとしてもそれが直接的にリピートする理由にはなりにくいことだ。

飲食店が特に顕著だが、最近はハズレのお店を探す方が難しく、価格もそこそこに美味しい料理を提供する居酒屋さんは山ほどある。しかしながら、そのほとんどが2回目がないお店ではないだろうか。

つまり、サービスと価格に対する満足度はあっても、2回目を後押しするような“何か”が足りないということが分かる。

妥当性があることが選択肢の一つになっても次また行く理由にはならないのだ。

一方で、価格に対する妥当性がシビアにみられるものもある。それは、定期的に使用することが決まっているサービス(固定費)や生活必需品など。定期的な消費が決まっているサービスや商品であればあるほど、価格の満足度がリピート理由の最上位になる。

事前期待と実評価の差異

2回目を後押しする“何か”について。一つは、事前の期待と実際の評価の差異である。

期待とはすなわち、既成観念に基づく予想に近いもの。そのお店自体だけでなく、そういうお店全体に持っているイメージと言ってもいいかもしれない。

この予想が”実際の評価をいかに上回るか”がリピートのカギとなる。

当然ながら、立地、料理、雰囲気、価格、スタッフ、デート、接待、飲み会など様々なシチュエーションによって、また個々人によって評価項目は変わる。

ただ、だれしもが事前情報や価格帯、立地などから店の内装や客層、雰囲気など「こんな感じのお店だろうな」というイメージを少なからずしているはずだ。

例えば、コンセプトがしっかりしていて落ち着けそうなお店だったが、実際に行ってみると、一貫性のない造形物や雑多なPOPがあったり、使い古されたメニューが出てきたりすれば、サービスと提供価格の妥当性に満足しても「なんか思ってたのと違うな」という印象を受けてしまったりする。

一方で、場末の焼き鳥であれば床が汚いのも味だし、ビールケースに腰を掛けるのもまったく抵抗はない。夫婦で長年やっている小料理屋であれば雑多に置かれている置物や使い古されたメニューも趣の一つとして溶け込む。

人はみなそれぞれ持つ期待との差異。何かしらの“違和感”を感じとって取捨選択している。

顧客との最適なコミュニケーションとは

2回目の利用を後押しする“何か”のもう一つ、それは顧客との最適なコミュニケーション。ここで言いたいのは”顧客との関係性について”である。

提供側の目線での最適なコミュニケーションとは「自分が何者であなたにどうなってほしいか」を伝える行為だと言い換えられる。

これに気付いた原体験が、学生時代の居酒屋でのアルバイトだった。

その店は、魚屋がやっている居酒屋で、魚バカ達が (良い意味で)、 高級店で食べたら数倍もする魚を手ごろな値段で提供する店だった(客単価平均4,000円前後で学生身分でも安価で美味しいと感じたほど)。

いつからか、そんな美味しい魚の存在を「お客さんにも、知って、好きになってほしい」という思いが源泉となり、また来てもらうためにはどのようなコミュニケーションをすべきか考え、行動していた。

例えば、以下のようなものである。

会計を頼まれそうな頃合いに頼まれていないのに新しいおしぼりと暖かいお茶を出す。大抵のお客さんがハッとして微笑む(極々まれに見誤ってもう一杯頼まれることもあったが)、特に年配のご夫婦はとても喜んでいた。

社会人の宴会グループで下座に座っている部下の方が全体の進行を気にしておかわりを聞くのを躊躇っている時、話の区切りを見計らって次どうされますか、と聞く(部下の方に尋ねる)。

一本ものを頼みたいけど種類が多くて悩んでいそうな若いカップルには、塩焼きならノドグロ、煮付けならキンキ(だけど、2,980円と少し値が張るから…)今が旬のカマス(780円)も美味しいのでおすすめです、と提案してみる。

もう少し頼もうか悩んでる方には自分が食べておいしかったメニューを紹介する(知らない人も多いと思うが、目光の唐揚げが美味しい)。

あくまでほんの一例だが、こういった対応が来店したすべての人に最適なコミュニケーションだったのか。否、距離が近く押しつけがましいと嫌がる人もいただろう。

しかしながら、別の日に違う人と一緒に食べに来てくれたり、「これが最高なんだよ」と頼んだ魚を自慢げに紹介する会話をふと耳にしたり。

小さいお店ながら連日繁盛していたことから察するに、そこに価値を感じて、2回目の意義や目的を見出してくれた人は決して少なくない、と捉えている。

むしろ社会人になって多くの飲食店に足を運んで、繁盛していた理由が腑に落ちた感じだ。

根幹は、ただ純粋に「四季折々の美味しい魚をまた食べに来てほしい」だった。

リピートしてもらうためには

リピートしてもらうためには、2回目もまた利用する意義や目的を見出してもらう必要がある。

それには、

・サービスと提供価格の妥当性を損なわない(満足度を下げない)こと
・期待を裏切らず、良い意味で期待を裏切ること
・「どうなってほしいか」「どうしてほしいか」を表現すること

である。

飲食店を引き合いに出したが、これは種々様々なサービス、商品にも同じことが言える。一見すると簡単なように見えるが、実際には、仮定と検証、実践が幾重にも積み重なっていることだからそう単純なことではない。

とはいえ、私もデザイン制作業務に携わる一人として引き続き、1回限りになった違和感の正体、2回目があった理由については意識的に言語化していきたい。


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