人の価値観というのは十人十色それぞれで、例えば、価値観を問う代表的な質問で以下のようなものがあります。
「あなたにとって、幸せとは何ですか」
「あなたにとって、大切なこと(譲れないこと)は何ですか」
さて、皆さんはこれらの質問に簡潔に答えることができるでしょうか。
意外と自分がどのような価値観であるかちゃんと言葉で理解している人、伝えられる人というのは少ないのではないかと思います。
価値観というのは、相手に押し付けたりするものではなく、勝ち負けや優劣でもなく、等身大の自分自身が納得できる答えであるか、という一点が重要です。
それには、思考を言語化して明確にすることが必要で、思考を言葉で規定することにより、世界の捉え方が変わって、人生に向き合う姿勢が変わります。
また、自分の価値観を言葉で定義することで、自分の価値をうまく伝えるようになります。物事の見方がハッキリしている人は芯や軸があって魅力的に見えますよね。今回は価値観の言語化について書いていきます。
人は思考の努力を省きたい生き物
人というのは「なんとなく」という理由で物事の善し悪し判断してしまったり、他人に身を委ねてしまうことが多くあります。
これはなぜか。答えは至ってシンプルで「思考することがとてつもなく面倒な作業だから」です。発明王のエジソンがこんな言葉を残しています。
「人間は思考する努力を省きたいために、ありとあらゆる方便に頼ろうとする」
つまり、どこかで見つけた間違ってなさそうな言葉や、気持ちを表す大雑把な言葉をうまく見繕って、考えるという作業を避けているということ。その方が、圧倒的に自分で考えるより楽なのです。
価値観を言語化することによるメリット
人は正体が分からないものを怖がる習性があり、それは自分の思考も同じことが言えます。「自分の人生の意味って一体なんだろう」「このままで本当にいいのかな」などと、なんとなく分からないままグズグズしてしまうことがよくありますが、悩むこと自体に意味はなく、人生の進路や次の行動に漠然と「悩んでいる」ときに価値観を言語化することで問題の本質や次の一手が見えてきます。
以前、「なんとなく、考えたつもりから脱却するには」でも触れていますが、なぜそう思ったか、と思考を言語化していくことで、以下のようなメリットがあります。
- 自分の正体を明らかにする。
- スタンスがはっきりする。
- 善悪の判断材料や行動基準になる。
これらを明確にするために価値観を問いていくのは非常に有効な手段だと言えます。
パラクラインとオートクライン
コーチングの用語で気付きを起こす仕組みで「パラクラインとオートクライン」と呼ばれるものがあります。
パラクライン効果とは…
実験医学onlineより引用
細胞からの分泌物が大循環を介して遠方の細胞に作用する(エンドクライン)ではなく、直接拡散などにより近隣の細胞に作用すること。本稿においては特にβ細胞からの分泌物が直接近隣に存在するα細胞に作用することを指す。なお,分泌された物質が分泌した細胞そのものに作用する場合はオートクライン効果という。
元は細胞レベルの情報伝達の作用を人に置き換えて表したものです。オートクライン効果は「分泌された物質が、分泌した細胞自身に作用すること」とですが、人は言葉にすることで、自分の思考を再認識します。
つまり、誰かに伝えようと「頭の中の思考や感情、感覚を言葉にしていくことで気づきを得る」のです。
価値観の言語化にはマインドマップの使い勝手がとてもいい
思考のアウトプットには手書きの方が良いと言われていますが、こと価値観の言語化に関してはマインドマップのアプリやソフトウェアの方が使い勝手がいいのではと思います。
紙に書き出してみたものの、うまく整えながら書き出すことを優先してしまって、中々うまく言葉が出てこなかった経験がありました。マインドマップだと視覚的に分かりやすく、並び変えることができるので後から整理がしやすいのです。
手順としては、主題となる価値観への問いを中心に据えて、それに対する答えを右側に打ち出していきます。答えに対する理由を以下の質問でより具体的に深く掘っていきつつ、時には視点を変えて、多角的に見ていきます。
「なぜそう思ったのか」
「具体的にどういうことか」
「実現させるために必要なことはなにか」
「実現できなかったらどうなるか、どういう気持ちか」
「その他やそれ以外では」
「本当にそうか、それだけか」
これらを繰り返していくと、靄のような感情や感覚が具体的な言葉に変わっていき「自分はこういう風に考えていたのか」と、どんどん正体が明らかになっていきます。行き詰まった時は、日を開けてみたりしてもいいですし、人に意見を求めてみてもいいでしょう。オートクライン効果による思考の再認識で、好奇心や探求心も芽生えてくるはずです。
さいごに
価値観に正解も不正解もありませんし、法律や公序良俗に反しない限り、善し悪しもありません。
社会のルールやトレンドが変わっていくように自分の価値観も刻々とまた変化していくものです。自分と違った人の価値観に触れた時にそれが心に響くものであれば、そこから学び、自分の価値観を変えてゆくという姿勢も時には大切です。
そのためには「自分の立ち位置を知ること」です。
まずは、マインドマップをダウンロードするところから始めてみてはいかがでしょうか。