デキるビジネスマンになる落語のススメ

デキるビジネスマンになる落語のススメ

今年の2月11日に講談師の神田松之丞さんが 6代目神田伯山を襲名しました。

講談や落語に興味を持ったのはここ一年のことで、きっかけは松之丞さんの講談をテレビで見かけたこと。本来3~40分程度ある長尺のネタをテレビなので、たった5分にまとめてお送りするというもので、その5分の話に惹き込まれてしまい、それからYoutubeなどで講談や落語を見るようになりました。

100年に1人に天才と謳われ、今もっともチケットが取れないと揶揄される松之丞さんですが、いつか寄席に行ってみたいと思っていたところ、先着順で観覧ができるとの講演情報をTwitterで目にして、一念発起、この機会しかないと考えて、勇気を出して足を運んでみました。

「足先から鳥肌が立った」

生まれて初めて、目と鼻の先で落語と講談を体験した感想はこの一言に尽きます。

新一万円札の肖像画として選ばれ、日本経済史に多くの功績を残した渋沢栄一も落語を愛したと言われています。数百年の時を超えて今なお愛される日本の伝統芸能について、書いていきます。

知らない人のためのざっくり落語の世界観

簡単ですが、落語の世界観をざっくり紹介していきます。日常生活で見聞きする言葉が意外と落語や寄席のシステムが由来していたものだったりします。お笑い好きの方もそうでない方も、これを機にぜひ雑学として覚えておくとどこかで使えるかもしれません。

落語の噺の構成

落語というのは「枕」「本題」「オチ」の3つで構成されています。

枕は、本題への導入部分です。自己紹介や時事ネタをこれから演じる本題とからめて話をしたり、本題をより分かりやすく理解できるよう昔の慣習や時代背景について説明をします。また、場の空気を和ませたり、温めるために客をいじったりもします。

落語で一番重要な最期を締めくくるオチですが、とんちが利いたもの、二つの意味を持つ駄洒落だったり、勘違いや間の抜けた失敗談といった代表的なパターンがあります。

落語家の階級

落語家として一人前になるには十数年の歳月がかかり、以下の階級が存在しています。

前座見習い…師匠に弟子入りした見習い。カバン持ちや雑用をこなす。
 ☟約1年
前座…………寄席で最初に高座へあがる。師匠や兄弟子のお手伝い。
 ☟2~5年
二つ目………前座の次に高座へあがる。雑用やお手伝いの仕事がなくなり、自身で落語会などを開ける。
 ☟5~10年
真打ち………師匠と呼ばれ、弟子をとることができる。

一人前になるまでに大体15~6年前後の歳月が必要とされています。また、基本的には年功序列(弟子入りをしてから)とされていますが、中には能力や技術の高さによって短い年数で真打ち昇進が決まるケースも珍しくないそう。

江戸落語の派閥グループは4つ

現在東京には、4つの派閥があります。特に明確に対立構造があるわけでもなく、取り立てて仲が悪いという状況でもないそうですが、成り立ちを簡単に紹介します。

落語協会http://rakugo-kyokai.jp/
1923年創立。関東大震災で東京が壊滅状態になったことを受け、落語家が集まった。

落語芸術協会https://www.geikyo.com/
1930年創立。新興メディアであるラジオへの出演が禁じられていたが、当時大人気だった柳家金語楼が古いしきたりに反発し、ラジオへ出演。寄席に出演できなくなった。そこへ吉本興業が支援して組織を立ち上げた。

円楽一門会
1978年創設。三遊亭圓生が落語協会から脱退し、立ち上げ。

落語立川流http://tatekawa.info/
1983年創設。弟子の真打昇進試験の結果に異議を唱えた立川談志が落語協会から脱退し、立ち上げ。

いずれのグループも主義主張や方針が異なるわけでもなく、どの師匠に弟子入りするかで所属するグループが決まってしまう程度のものだそうです。

また、落語家さんには、三遊亭、立川、春風亭、林家、桂といった名字がありますが、正式には「屋号」「亭号」と呼ばれるもので、弟子は師匠の亭号を受け継ぎ、名前は師匠につけてもらうことで芸名が決まります。

落語の魅力は『普遍性』にある

落語の良いところ。その魅力の感じ方は人それぞれ違うと思いますが、古典落語の噺は兎に角可笑しくて笑っちゃうようなバカバカしい話ばかりです。

中には人情に訴えかけたものや感情を揺さぶるような感動的なものもありますが、基本的に救いようがまったくない、気分がズーンと沈むような話はないです(と思っています)。

また、古典落語で語られるキャラクターや物語は、人の気質、性といった本質を突いているものばかりです。これは、経済レベルや人々の生活がどれだけ豊かになっても変わらない普遍的なもので、単純に落語を聴くことが楽しいと思える側面があります。



「落語の本質は、人間の業の肯定である」


これは、立川談志の言葉です。欠点だらけの人間を描くのが落語であり、人というのは必ずどこかに業の部分を隠し持っている。「それでもいいんだよ」と言ってくれるのが落語であると。

みな誰しもが抱える「人の業」が受容される安心感、優しさのようなものが落語にはあって、その一面こそが、江戸から数百年経ってもなお伝統として受け継がれ続ける理由だといえます。

少し脱線しますが、これを考えているとき、「あれこれ何かと似ているな」とふと思ったんです。そう、これってエガちゃん(江頭2:50さん)と相似しているなと。

近年めっきり露出が少なくなったエガちゃんがYoutubeチャンネルを始めて、爆発的に登録者を増やしている理由。それも彼の「業の肯定」「根底にある優しさ」じゃないかと思うのです。 ☞エガちゃんねるのリンクはこちら

落語のエッセンスを日常へ

落語の基本構成について、先ほど書きましたが「枕をきけば噺家の腕がわかる」といいます。つまり、話をする上で前振りがとても重要だということです。

この前振りを意識的に行うというのは、日頃の雑談トークや仕事やプライベート限らず、人に物を話す際に使える有効な型といえます。

前振りのポイントとしては以下の3つです。

  • 結論または背景、理由を説明する。
  • オチへの伏線を張る。
  • オチとは逆の伏線を張る。

話したい出来事や結論(オチ)に対して、逆算して前振り(枕)を考えていくというのが分かりやすいです。

また、雑談をするにしても日頃起こった何気ない出来事や行動を以下のポイントを踏まえて話をしてみると聞き手にとって面白い話になります。

枕…なぜそう思ったか、動こうとしたきっかけ、その時の感情、思いを語る。

本題…細かい描写、心や体の動きを言葉にする。

オチ…結果どうだったか、どうなったか、何が起こったか、何を思ったか。

すべらない話やトークがうまいお笑い芸人さんも落語の基本構成の型をうまく活用しています。これらを意識的に話すだけで、いつもの何気ない話がより「らしさや人となり」「感情と情景」が相手に伝わる話になることでしょう。

さいごに

鳥肌が立った瞬間というのが、立川寸志さんの枕から本題に入るまさにその時です。場の空気がガラッと変わったんです。瞬間最大風速ですべてが一気に吸い込まれるような、そんな感じがしました。

嘘みたいな話ですが、水滴が落ちてきたトトロみたいにゾワゾワーっと鳥肌が立ちました。笑

何を言ってるか分からないと思いますが、一生忘れられない体験になりました。もし、落語に興味が少しでもあるという方は、ぜひ一度肌で感じてみてはいかがでしょうか。

左から笑福亭羽光、三遊亭好吉、神田伯山、三遊亭天歌、立川寸志(敬称略)

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