不動産賃貸仲介の商慣習の謎

不動産賃貸仲介の商慣習の謎

以前、「新型コロナウイルス、ワンルーム在宅勤務の限界」で書きましたが、2か月弱におよぶ長い緊急事態宣言がようやく明けて、前向きに引っ越しを検討していたことから、先日いくつかの仲介業者さんに問合せをして、気になった物件を見に行ってきました。

雑談の中で最近の状況を聞いて見ると、どうやらこのコロナ禍でも変わらず物件の問合せは多く入ってきていて、外出自粛中においても忙しく稼働しているとのこと(事実かはさておき)。

数年ぶりの内見で気持ちがワクワクしていたところ、これまで当たり前と思って(なし崩し的に)許容していた所々に「ん?」と疑問符が付きました。

ここ最近、不動産に興味があり、インターネットや本などを元に情報収集をしていった結果、色々と知識がついていったからなのですが、 物件条件の案内や内見接客を実際に受けてみると、サービスが一方的で、ユーザー目線に立った設計がされていないと感じたからでした。

今回はセールス的な観点から、不動産仲介業の疑問について書いていきたいと思います。

不動産会社の裏側を描いた正直不動産が面白い

いきなり脱線しますが、正直不動産というマンガをご存じでしょうか。不動産会社を経営している知り合いからおすすめされて、読んでみたのですが、これがとても面白いのです。

内容はというと、不動産会社の営業マンに焦点を当てて、不動産売買や仲介の様々な手法が紹介されているのですが、用語が分からない、不動産の知識がない一般人でも分かりやすいように説明されており、実生活で役に立つこと間違いなしです。

以下、東洋経済オンラインで一部抜粋して紹介されている記事がありますので、ご存じない方はぜひ一度見てみてください。

不動産営業マンが「絶対に言わない」驚愕の真実 漫画「正直不動産」(第2話)
不動産会社・登坂不動産のエース営業マンである永瀬財地(ながせ・さいち)、35歳。「売るためだけ」の情報を顧客に伝え、時には嘘も厭わない口八丁ぶりで、圧倒的な売り上げをたたき出してきた。だが、ある地鎮祭で石碑を壊して以来、事態は一変。何かの祟りなのか、「嘘がつけない」体に変貌してしまったのだ。真実は”千に三つ”とも言われる不動産業界で、”正直営業”しかできなくなった永瀬は大苦戦するが…?

https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/business/toyokeizai-345151

最新巻では、本来支払うべき仲介手数料は必ずしも家賃の一ヵ月分でなくてもよく、交渉の余地があるということが言及されています。まさに目からウロコです。

不動産仲介のよく理解できない当たり前たち

さて、最初に書いた気になった点という話に戻りますが、いくつかあります。

違和感①来店と同時にアンケートや個人情報の記入

もちろん、断ることはできますが、物件を見に行くというだけで、名前、住所、年齢、電話番号、引っ越し時期などの個人情報の塊を「当たり前のように」記入を促されることに違和感があります。

仲介手数料が安いところで契約しなおすという不義理のヘッジという意味も少なからずあるかと思いますが、そもそもは名前と連絡先があれば十分なはずで、この時世に個人を限りなく特定できる情報を紙で残すことのリスクと受けるサービスの内容が見合ってないと感じます。

例えば、携帯電話会社では契約時に不要になった書面類は客前でシュレッダーにかけるなど、復元ができないよう裁断処理をしていますが、回収した用紙のその後、管理が適切にされているのかにも不安を感じてしまいます。

違和感②室内消毒、消臭除菌、害虫駆除の初期費用

数年前、北海道札幌市で消臭スプレー缶が爆発したという事故が取り上げられたことを記憶に残っているかと思いますが、まだまだこういった物件が散見されます。

あくまで任意で入居者の依頼を前提とした実施ならばまだ分かりますが、あれだけ大きなニュースにもなって、一般にその実態が認知されているのにも関わらず、いまだに入居時必須の物件が見られるのは不思議で仕方ありません。

賃貸マンション、有償の「除菌消臭」の多くが未実施の疑い…アパマン、オーナー一斉逃走

https://biz-journal.jp/2019/06/post_28528.html

初期費用でこれらの支払いが必要な物件の入居待ちの部屋(ハウスクリーニング、室内除菌済み)に蓄積したホコリが残っていたり、髪の毛が落ちていたりするのを見ると、とてもイヤな気持ちになります。

その他だと、業者指定会社での保険加入を要するものも同じようなことが言えます。単身世帯については、大体が損害賠償1000万円程度を上限にした保険だと思いますが、同程度の補償内容であれば大体5~7000円(1年あたり)で加入できます。※1.5~2倍程度の割高な保険料設定がされている場合があります。

借主側の知識不足という点も否めませんが、これらの慣習や当たり前は、貸主も借主も仲介者も管理者も対等であるという視点がごっそり抜けていると言わざるを得ません。〇〇してあげてるのだから当然という独善的な思考によって成り立つ歪な商取引は、社会の転換期や移り変わりの時に必ず大きくあおりを受けます。

仲介手数料、敷金礼金などの初期費用が掛からないものや、フリーレント(入居〇ヵ月賃料0円)がついている物件がここ数年で増えてきていることから察するに、一部の人気エリアを除いて、入居者確保の競争が激しくなってきていることは間違いありません。

これまでの力関係が変わりつつあることが、賃借者側に利益をもたらす一方で、大家さん側が割を食っているということになりますが、これは、不動産仲介業者にも同じことが言えます。賃借者の母数がこれから減少していくこれから先の未来では、物件の仲介だけをする専門業者は必ず淘汰されていくことでしょう。

これからの不動産賃貸仲介業の在り方

以前、フリーランスで高価格帯の賃貸仲介をしている女性の方とお話したことがあるのですが、その方は、一度きりのお付き合いではなく、また次の引っ越しの相談をされたり、同じような属性の友人を紹介されたりと、まさにコンシェルジュ的に立ち回って仲介を生業としている営業マンでした。

特に高価格帯では、物件の紹介ではなくて、暮らしと生活の総合提案ができるライフプランナー的な仲介業者が今後より台頭していくと考えています。同じ目線で物件選びを手伝ってくれるプロという立ち位置です。

一方で、仲介手数料のみでは継続が困難になるというのは前述したとおりですが、今後、単純な物件仲介というサービスだけでは成り立たなくなるので、様々なオペレーション工数削減の手法が取り入れられていくことが考えられます。

単身者向けの賃貸は人手不足と収益性の観点から機械的に行う遠隔内見が主流になったり、同行不要の内見運用システムが構築されれば借り手側にもメリットがありそうです。※スマートロックを使って、任意の時間のみ有効となるキーを発行して、賃借検討者のみが現地に赴いて内見を完結する。

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