ズームの企業文化「未来実現ノート」ワークショップ

ズームの企業文化「未来実現ノート」ワークショップ

ズームには、当社の持つスキルや能力といった人的リソースを十全に発揮するため、いくつかの独特な社内文化とサポートがあります。

例えば少し変わったものでは、姿勢の定期診断というものがあります。これは提携するインストラクターに、スポーツ科学的な知見に基づくアライメントのチェックとリスク改善のための運動処方をしてもらう、といったものです。

通常こういった自身の体のメンテナンスは、各人の裁量で自己管理されているものだと思いますが、当社ではその重要性を鑑み、社の取り組みとしてシステム化しています。

以下の図は、以前「テレワーク体制を確立するために乗り越えるべき2つのポイント」という記事でも紹介されていましたが、スキルや能力の下には、図のようにモチベーションとフィジカルがピラミット状に配されています。

フィジカル=健康な肉体は全ての土台となる言わば基礎です。そのため、個人の裁量に任せるのではなく、会社主導でサポートを行うべきだという理念のもと施行されています。

そして今回ご紹介するのは、中段の「モチベーション」に関してです。

モチベーションのサポートに関してもいくつかの取り組みがありますが、その中の一つとして、夢や目標をアウトプットした「未来実現ノート」というものを作成するワークショップがあります。

これは年に一度、自身の夢や目標を明確化し、形に残すことで随時リマインドできる装置する、モチベーション管理の一環として行っています。

内容は単純で、それぞれが宿題として夢や目標を100項目程あげます。そしてその内のいくつかをセレクトして関連した画像をプリントアウトして持参し、こちらで手配した手帳台の冊子型ノートにコラージュしていくだけです。

では、なぜそのようなことを行なっているのか。その有用性を当社がどう解釈しているのかを、ノートのイントロダクションとして記載されている内容をもってシェアしたく思います。



目標は紙に書くと実現してしまう

「目標は紙に書くと実現してしまう」

こんなことを言われても、大概の人は「そんなはずがあるか」と聞く耳を持たない。ことと次第によっては『詐欺師の言』だと怪訝な顔をする人もいるだろう。

まあ確に気持ちはわかる。目標を紙に書くなんて単純な行為で、目標が実現してしまう、夢が叶ってしまうなんて、そんなうまい話にわかに信じ難い。実際私も、かつてはそうだった。

しかし世に数多ある、いわゆる“成功者”と呼ばれる人たちの著書を読むと、その多くに──いやほとんど漏れなくと言っていいほど「目標は紙に書いとけ」といったような記述がある。

とある経営者は、実現すべき目標を書き留めて手帳にファイリングしていると言う。別の経営者はノートの切れ端に夢を書いて本に挟んで書棚にしまっておくらしい。世界で活躍するトップアスリートが少年時代に現在の成功を作文に綴っていたというのもよく聞く話だし、全国大会常連校の監督が選手に毎年必ず目標をノートに書かせているというのも有名だ。

これは偶然の一致だろうか?たまたま成功した人がみな似た行動をとっていただけなのだろうか。

ジョセフ・マーフィー氏といえば、『マーフィーの成功法則』という著書を世に送り出して一躍有名になったアメリカの著述家だ。彼は、潜在意識の有効な活用方法を体系化することで、「目標は紙に書くと実現する」というメカニズムの一端を見事に解き明かしてみせた。

他にも世界には、この法則を偶然と片付けず原理原則として解釈しようと試みた人々が星の数ほど存在する。そしてその結果、今では経営者のための自己啓発を飛び越えて、アスリート向けのマインドセットや、コーチング論教育学にまで派生して、世界中で活用される知見となった──。

書いたことが現実になるのは、脳のメカニズムだった?!

難しい事を挙げるとキリがないが、根本原理は単純明快。要は、人の『意識』を『顕在意識』と『潜在意識』の二つの領域に分類した心理学や脳科学分野の知見が鍵となる。

顕在意識とは、我々の認知下において活動させている意識領域を指す。私たちは顕在意識の最大126bit/毎秒という情報処理リソースを以って、目の前のモノゴトを認識し解釈している。ちなみに、大体40bit/毎秒というのが、人の話を聞いて理解する際に用いる処理量らしいのだが、では三人の話を同時に聞けるかと考えてみると、たった126bit/毎秒ですら、全開で発揮する困難さを痛感することと思う。

かわって、潜在意識とは、我々の認知下にない──いわゆる無意識に活動させている意識領域を指す。そして驚くべきことに、その情報処理リソースは1000万bit/毎秒という驚くべきスペックを有している。加速学習の権威であるポール・シーリィ氏や教育心理学者ウィン・ウェンガー氏の研究によると、視覚1000万bit、触覚100万bit、聴覚40万bitの順でこの驚異的な処理リソースを発揮しているのだとか。

そして、この潜在意識の持つ膨大なリソースを有効活用する最も簡単な方法論が「目標を紙に書く」ということになる。

潜在意識は、自らが意図しているかいないかに関わらず、質問ができるとその解決に必要な情報を集めはじめる性質を持つ。今度試しに街へ出掛けた時、目を瞑って「若い女の人」と念じてから目を開けてみて欲しい。驚くほど短い瞬間で見つけることができると実感するだろう。

この仕組みを直接的に活用している例として、競技カルタ選手がわかりやすい。彼らは時に、読手が息を吸い込む音だけで次に読まれる札を認識するほど、研ぎ澄まされた情報収集能力を、潜在意識リソースによって実現している。

人は、目的意識を持っていないと簡単に情報から目を滑らせる一方で、“目的意識を持つ”というたったそれだけのことで、どんなに些細な情報も逃さず収集できる能力を有している。その能力は人類の到達点とも言われる量子コンピュータの処理速度を優に超え、さながらパラレルコンピュータのように複数の問題を同時並行処理していることがわかっている。

なので、解決したい問題・達成したい目標・叶えたい夢があるのなら、潜在意識に投げかけておけばいい。あとは脳のバックグラウンドが全自動で情報を集め、勝手に処理していてくれる。

これが「目標は紙に書くと実現してしまう」メカニズムの単純明快な根本原理だ。

人の思考は、放っておくとすぐネガティブに傾倒する

人間の思考は1日に、平均して約6万回働いているのだが、内75%に当たる4万5千回は悲観的な思考に割かれている。

その原因はシンプルで、我々人類の『生存本能』に由来する。

例えば原始の頃、眼前の木に実る果実を手に入れようと思ったとする。しかし、よく見るとその木の後ろで猛獣が眠っている。そんな状況の中、危険を犯して利益を求める種と、危険を回避する種、どちらが生存に適していただろうか。

その様な状況──不確実性下における選択で人の思考が損失回避に強く反応してしまう思考モデルを、『プロスペクト理論』という。原始の頃ではかなり重要な思考だったのは間違いないが、安全な現代社会においては、少々過剰なバイアスとして作用してしまっていると言わざるを得ない。

人の思考は、デフォルトでネガティブ寄りに働いている。

興味よりも影響に強く関心が向くし、その影響も利益より損失を過大評価してしまう。そのせいで、この脳の仕組になんの対処もしていないでいると、夢も目標も、線香花火の様に一時輝くだけの儚いものになってしまう。
『エビングハウスの忘却曲線』によれば、なんと「やる気」はたったの5分で消えてしまう。

そんな悲しい状況を打破するためにも、夢や目標は紙に書いて、脳に強烈に焼き付けておくことが肝要だ。

そしてできれば、それを見てワクワクしよう。妄想を膨らませてニヤニヤしよう。まだ実現していないにもかかわらず、いろんな人に見せて自慢してもいい。もしかしたら、端から見ると気味悪がられるかもれない。でもそのくらいで本来ちょうどいいのだ。

人の思考は放っておくと、どんどんネガティブになってしまうのだから、少しポジティブ過ぎるくらいでちょうどフラットなのだ。

実現効率を高めよう

以下におさめる方法論は、認知心理学やスポーツ科学の知見を基に、現時点で有効とされ、広く実践されているものを集めている。

ただし、もちろんこれらが全てではない。不要なものは削ぎ落とし、自身にとって有効と思われる手法があれば進んで取り入れてみて欲しい。

手書き

目標は「手書き」で書き起こす。
これは、世界各国で行われている、タイピングと手書きとで脳に及ぼす影響について調べた教育学的な研究の知見によって明らかになった。
東京大学の研究では、タイピング時に脳が出す動作の命令は8つの組み合わせであるのに比して、手書きは1万を必要とすることがわかっている。
脳科学教育研究所所長の桑原清四郎氏曰く「文字を書く行為には指先を繊細に動かすという点で、脳への刺激を考えると手書きに勝るものはない」のだそうだ。

ビジュアライゼーション

目標は、文字とは別に写真やイラストなどビジュアルで表現する。
これは、ポール・シーリィ氏ならびに教育心理学者ウィン・ウェンガー氏による研究で明らかになった、潜在意識の処理リソースの活用において視覚のみが1000万bitの上限を使い切ることができるという結果に基づいている。
また、ワシントン大学のジョン・メディナ氏の研究でも、言語情報に比べ視覚情報は3.5倍も長期記憶に優れているという結論がある。
脳はビジュアルとして情報を取り込むことによって、より強固な記憶の長期定着を実現する。

SMART理論

これは、ジョージ・T・ドラン氏の論文から抜粋され’80年代に体系化された目標設定で重要とされる指針だ。それぞれの頭文字は、

S(Specific)=具体的か、
M(Measurable)=計測可能か、
A(Agreed upon)=同意しているか、
R(Realistic)=現実的か、
T(Timely)=期日が明確か、

を指す。やや古いモデルだが、自分なりに要不要を振り分けて、参考にすると良い。

アファメーション

目標を書き起こす時、「~したい」のような表現ではなく「~した」「~している」「~しつつある」などの、完了形または現在系及び進行形で記述する。これは、主にアスリートのカウンセリングやコーチングにおいて活用されている暗示テクニックだ。
ノーベル賞学者のジェラルド・エデルマン氏曰く「人の記憶は貯蔵されているのではなく、思い出すたび毎回再構築されている」。
つまり脳、特に潜在意識にとって現在・過去・未来という認識はあまり意味がなく、瞬間毎に新たに作り出しているのと変わりがない。そのため潜在意識を絡めると、この手の暗示は極めて効果的に働く。

インプリンティング

目標が書けたら、毎日持ち歩くことで無意識に重要なものだと脳に刷り込む。ニヤニヤと眺めながら妄想・連想することでストーリーとして強く意識させる。
最近の脳科学の知見でも言われている通り、人の脳は物語に反応するように強く配線されている。そのため、達成したシチュエーションを詳しく妄想することは、脳への情報定着にとって極めて重要な行為になる。
目標を眺めるタイミングは、顕在意識の動員が少ない時、つまりボーッとしている時が良い。具体的には睡眠の前後が最も直接的に潜在意識に働きかけられる。

さいごに

本年、2021年の「未来実現ノート作成ワークショップ」は、今月始め2月2日に、他社様からも希望される数名をお招きして、開催しました。

初参加の方もおられましたが、ハサミやノリ、色とりどりのペンを使ってノートにコラージュを作成する作業自体が、童心にかえれたようで楽しいと、大変熱中されていました。出来上がったアウトプットも皆さん大変素晴らしく、きっと各人の活動指針として強力なツールとなることでしょう。

私自身も実践してまだ2年ですが、着実に目標を達成してきています。
最初は、このようなシンプルなことで自分のモチベーションが向上するなど、少々信じ難くもありましたが、きっと自分が思っている以上に、自分という人間は単純だったのだと今は強く実感しています。

ナレッジ・ノウハウカテゴリの最新記事